今回ご紹介する作品は【悪人伝】【夏時間】【藁にもすがる獣たち】【V.I.P. 修羅の獣たち】【偽りの隣人 ある諜報員の告白】【非常宣言】【犯罪都市】【犯罪都市 THE ROUNDUP】の8作品をネタバレしない程度に紹介します。
韓国では大学の進学率も高く、俳優さんも女優さんも大学で専門的に学ぶのが普通なので、主役じゃなくても演技が上手いです。一方、日本では歌手が俳優になったり、モデル出身だった人が俳優になったり、アイドルが話題で主役に抜擢されたり、演技がどうこうというよりも視聴率や人気が先行しているような傾向があり、日本映画よりも韓国映画の方が感情移入して没入感も深い作品が多いような気がします。
【悪人伝】(2019)
評価★3.8 おすすめ度83

監督:イ・ウォンテ
出演者:マ・ドンソク、キム・ムヨル、キム・ソンギュ、ユ・スンモク、ホ・ドンウォン、キム・ユンソン
ストーリー
ある夜、凶暴なヤクザの組長、チャン・ドンスが何者かにめった刺しにされる。奇跡的に一命を取り留めたドンスは、犯人捜しに動きだす。一方、捜査に当たるチョン刑事は、連続無差別殺人鬼によるものであると確信し、手掛かりを求めてドンスにつきまとう。
解説
2005年に発生した“天安連続殺人事件”がベース。警察は法で裁くために、ヤクザは復讐の為に、ヤクザと警察が手を組んで連続殺人犯を捕まえようとする映画。
野心溢れる若手アウトロー刑事と凶悪なヤクザの組長が手を組んで無差別連続殺人鬼を追う、この設定が面白く、3人がそれぞれキャラ立ちしていますし、3人の落とし前の付け方も納得がいくものになっていると思います。韓国ノワールらしいドス黒いヴァイオレンスや、狭い街中で繰り広げられるスリリングなカーアクションは見応え十分で連続殺人鬼の内から滲み出るサイコパス感もGood、コメディ要素もあり結構エンタメ寄りの良作のクライムアクションサスペンスです。
正義と悪という真反対の存在がタッグを組むというストーリー展開とテンポがとても良く最後まで楽しめ、テーマは『極道の生きざま』で、構図としては『ヤクザ&刑事 vs 連続殺人鬼』。と、言いながら結局のところはマ・ドンソクの男っぷりを楽しむ作品だと思います。
【夏時間】(2019)
評価★3.9 おすすめ度82

監督:ユン・ダンビ 脚本:ユン・ダンビ
出演者:ヤン・フンジュ、パク・スンジュン、パク・ヒョニョン、キム・サンドン
ストーリー
夏休みのある日、10代の少女オクジュは、父が事業に失敗したため、弟ドンジュと父と共に祖父の家に引っ越す。弟は新しい環境にすぐ馴染んだが、離婚寸前の叔母まで住みつき、オクジュは居心地の悪さを感じていた。そんななか、祖父が病気になり…。
解説
ドラマらしいドラマのないひと夏の物語。そんな中でも少女と家族には大きな大きなドラマが、ほぼおじいちゃんの家を舞台に展開します。
少年と少女の姉弟と父が夏の間、祖父の家に居候することになる。頑固な祖父とそりの合わない思春期の姉は、恋人がいるがなかなか会えない。さらに家に叔母も転がり込んできて、奇妙な家族生活が始まる。居心地は決して良くはないが、絶対にここが自分の居場所ではないと言い切れるほどに嫌なわけでもないという、奇妙な宙ぶらりんな感覚が全編に溢れています。この気持ちは、なんと名前をつけたらいいだろうと戸惑う感情が、丁寧に丁寧に幼い姉弟の心細くなっている気持ちに寄り添うように描かれているのが本作の素晴らしい点だと思います。
特別なことが起きるわけではありませんが、なぜか匂いと共にずっと忘れない記憶となるような、そんな特別な雰囲気のある、古い家屋の匂い、庭の菜園の匂い、アスファルトの匂い、夏の汗の匂いなどなど、匂いが見える映画作品です。
【藁にもすがる獣たち】(2018)
評価★3.7 おすすめ度84

監督:キム・ヨンフン 脚本: キム・ヨンフン 原作:曽根圭介
出演者:チョン・ドヨン、チョン・ウソン、ペ・ソンウ、ユン・ヨジョン、チョン・マンシク、シン・ヒョンビン、チョン・ガラム、チン・ギョン、パク・チファン、キム・ジュンハン、ホ・ドンウォン
ストーリー
多額の借金を抱えるテヨン、新たな人生を歩もうとするヨンヒ、事業に失敗したジュンマン、借金のために家庭が崩壊したミラン。ある日、ジュンマンが10億ウォンもの大金が入ったバッグを発見し、藁にもすがりたい欲望に駆られた獣たちの運命が動き出す…。
解説
恋人の借金の返済に苦しむ男、夫のDVから逃げ出したい女、認知症の母の面倒を見ながら働く男、それぞれの人生がある事件をきっかけにリンクする。日本のミステリー小説が原作。
バラバラの登場人物たちそれぞれの状況が実は数珠つなぎになっていて、最後に時系列が分かるように描かれており、興味を上手く惹きつける内容になっていて、ストーリーは6章で構成されていて分かりやすくなっています。ジュンマン(ペ・ソンウ)テヨン(チョン・ウソン)ミラン(シン・ヒョンピン)の3人のストーリーが並行して展開していき、それぞれ苦しい状況から逃れるため、大金を得ようと動いていきます。3人とも大金を求めて動き始め、それぞれの欲望が見事に伝わってきて面白いです。この3人以外でも欲にかられた人物が多く出てきて、見事なくらいに醜い姿をさらけ出します。
とにかくストーリー構成が秀逸で時系列がバラバラで進みますがパズルのように色々と繋がって、大金の行方が気になって画面に釘付けになり、陰湿な雰囲気の中で繰り広げられる地獄絵図、結局最後は誰が笑うのか、そして誰が殺られるのか、想像もつかない展開もあって楽しめる作品です。
【V.I.P. 修羅の獣たち】(2017)
評価★3.6 おすすめ度83

監督:パク・フンジョン
出演者:チャン・ドンゴン、キム・ミョンミン、パク・ヒスン、イ・ジョンソク、ピーター・ストーメア、チュ・ジンモ、キム・ジョンフン、チョ・ウジン、パク・ソンウン
ストーリー
韓国国家情報院と米・CIAの企てにより、北から亡命させられたエリート高官の息子、キム・グァンイルが連続殺人事件の容疑者として浮上する。警視のチェ・イドはグァンイルを追うが、国家情報院のパク・ジェヒョクの保護により捜査網をすり抜けていく。
解説
サイコパスな連続殺人鬼をめぐって警察やCIAなど様々な組織が交差する物語。
VIPが起こす連続猟奇殺人事件を題材に、韓国の情報局、警察だけではなく、北朝鮮、アメリカのCIAなどを巻き込んで展開する国際色豊かな作品です。ストーリーはなかなか複雑で、容疑者グァンイルを保護し、事件の隠ぺいを目論む国家情報院、グァンイルを連続殺人犯として逮捕したい警察、グァンイルを利用したいアメリカCIA、グァンイルが北朝鮮にいた時代に因縁のあったリ・デボムがそれぞれの思惑で動き、対立しながら、その組織の上でも駆け引きがあって、最初は理解が難しい印象を受けると思います。しかし、話が進むにつれて、それらの全てがグァンイルという人物の異常性が原因となっていることが分かり、そこからは話にすんなり入り込むことが出来ると思います。
キャラをしっかりと立たせている上に、細かい心理描写が丁寧なのでストーリーに厚みと説得力が出ていて面白く、外交ネタもここまでエンタメに徹して扱ってしまう、日本映画には無い今の韓国映画のある種の勢いを端的に感じる作品です。
【偽りの隣人 ある諜報員の告白】(2021)
評価★3.7 おすすめ度82

監督:イ・ファンギョン
出演者:チョン・ウ、オ・ダルス、キム・ヒウォン、キム・ビョンチョル、イ・ユビ、チョ・ヒョンチョル、ジ・スンヒョン、チャン・キンチュン、チョン・ヒョンジュン
ストーリー
1985年、軍事政権下の韓国。愛国心の強いデグォンは、自宅軟禁された政治家・ウィシクの家に盗聴器を仕掛け、24時間態勢で監視することに。だが、家族を愛し、国民の平和と平等を願うウィシクの声を聞き続けるうちに、デグォンは上層部に疑問を持ち始める。
解説
1985年に実際にあった、ある大統領候補の自宅軟禁事件を元にしたフィクション映画で、主化を求めて自宅軟禁された政治家と彼を監視する諜報員の正義を描いた社会派サスペンス。
軍事政権での強い弾圧の中で民主化を訴える大統領候補の強い意志とそれを抑え込もうとする政府の対立を描いた作品ですが、大統領候補宅を盗聴する監視チームの個性が上手く作用してコミカルで観やすくなっています。それでもシビアなところはしっかり重く描く韓国作品の良さがよく出ています。前半のコミカルで軽くて笑える盗聴の日々から、次第に国家の圧力が及んで来る後半の緊張感、政治家や諜報員との立場を越えて生まれた信頼感と感動のラスト!
本作は総じて予想とはいい意味で全く裏切られる快感を味わせてくれて、シリアスさとコミカルさのバランスが絶妙で、主人公デグォンとウィシクの関係から国を思うことの本当の意味を考えさせてくれるそんな作品だと思います。
【非常宣言】(2022)
評価★3.9 おすすめ度85

監督:ハン・ジェリム 脚本:ハン・ジェリム
出演者:ソン・ガンホ、イ・ビョンホン、チョン・ドヨン、キム・ナムギル、イム・シワン、キム・ソジン、パク・ヘジュン、ウ・ミファ、ヒョン・ボンシク、ムン・スク、ソル・イナ、クォン・ハンソル、キム・グッキ、イム・ヒョング、クイ・ヨルム、イム・ソンジェ
ストーリー
娘とハワイへ向かう飛行機恐怖症のジェヒョクは、空港で2人につきまとう謎の男が同じ便に搭乗したと知り不安を抱く。KI501便はハワイに向け飛び立つが、乗客たちが原因不明の死を遂げて機内はパニックに。一方、地上では刑事のク・イノが警察署にいた。
解説
飛行機内で起こるバイオテロの話。
テロリスト系航空機パニック映画と言えば、主人公たちのテロリストとの戦いが主に描かれるアクション寄りの作品が多いですが、本作は機内や地上の人々の人間ドラマを描いた群像劇になっています。機内ではイ・ビョンホンが、地上ではソン・ガンホを中心に、乗客を助けるために奔走するが、次々とアクシデントが降りかかって緊張感が増していく展開にハラハラします。テロ犯の心理背景や、日本の自衛隊の描かれ方など、ちょっとご都合主義なところも感じますが、没入感の強い映像はリアリティがすごくて目が離せませんし、韓国スター俳優2人を筆頭に、俳優陣の感情移入できる、確かな演技に納得の面白さだと思います。
ツッコミ所はあるものの丁寧に作られた王道パニックもので、感情に刺さるところはそこまで無いかもしれませんが、人間的な部分でたくさん考えさせられたりもするストーリーで、最後まで息をつかせぬ展開と飛行機ならではの迫力があり、スケールも大きく誰もが楽しめるエンタメ作品だと思います。
【犯罪都市】(2017)
評価★3.8 おすすめ度85

監督:カン・ユンソン 脚本:カン・ユンソン
出演者:マ・ドンソク、ユン・ゲサン、チョ・ジェユン、チェ・グィファ、イム・ヒョンジュン、チン・ソンギュ、チョ・ジヌン、ホ・ソンテ
ストーリー
2004年、ソウル。強力班のソクトはヤクザも恐れをなす屈強な刑事。ある日ビリヤード場で刺傷事件が発生。ソクトは犯人を捕らえ、反発しあう組のボスの仲を取り持ち街のバランスを保とうとする。だがそんななか、中国から新興勢力・黒竜組が乗り込んでくる。
解説
複数の暴力団の蔓延るソウルの警察が様々な事件に対処するお話。2004年に実際に起きた中国系暴力団の事件を題材にしています。
実録的な映画世界だけあって、描き出される登場人物たちの描写が警察側もヤクザ側も絶妙に生々しく、滑稽な様が映画としての面白味を生んでいます。韓国映画総じて言えることですが、演じる俳優たちの顔つきの実在感が映し出される世界の空気感のリアルを生み出しているのだとも思います。時に目を覆いたくなるバイオレンス描写も繰り広げられる中で、ドカンと構える主演俳優マ・ドンソクの存在感のみが圧倒的な娯楽に振り切っていて、ちょっと他の犯罪映画や暴力映画には無いエンターテイメント性に繋がっています。
凶悪なヤクザの面々を豪腕で叩きつけつつも、女性や子供には弱く、どこかドジでおっちょこちょいなマ・ドンソクそのものを愛でるべき作品だと思います。
【犯罪都市 THE ROUNDUP】(2022)
評価★4.0 おすすめ度86

監督:イ・サンヨン
出演者:マ・ドンソク、ソン・ソック、チェ・グィファ、パク・チファン、ホ・ドンウォン、ハジュン、チョン・ジェゴン、パク・ジヨン、ナム・ムンチョル、チョン・インギ
【犯罪都市】の続編
ストーリー
加里峰洞での暴力組織一掃作戦から4年後。衿川署強力班のマ・ソクトとチョン・イルマン班長は、韓国人犯罪者の引き渡しのため、ベトナム行きの任務を命じられる。そこで2人を待っていたのは、凶悪犯罪者、カン・ヘサンの存在とカンが起こした誘拐事件だった。
解説
ベトナムと韓国を股にかけた犯罪を解決するマ・ソクトチームの活躍の話。
前作は事実をもとにしたフィクションということでしたが、今回は完全なフィクションのようで、スケールもアクションもパワーアップしています。2作目だからと余計なことをせずに106分という短さの中でシンプルなストーリー、主人公の最強っぷり、新たな登場人物と前作からお馴染みの顔ぶれも活かしつつ観客の求めるものをしっかり見せてくれるところに好感が持てます。前作にあった暗さというか不穏さが今作ではかなり薄れているので好みが分かれそうですが、主人公の強さと敵の悪どさをそれぞれしっかりと描写してから対決へと向かう感じが堪らなく楽しいです。
マ・ドンソクの魅力が十二分に詰まっていて、脇を固める役者さんたちも前作に増してはずさないすべらない演技で素晴らしく、ゴア描写とカーアクション、オフビートなギャグも含めて前作の正統続編であり、期待が裏切られることはない作品だと思います。
まとめ(評価とおすすめ度)
タイトル | 評価★ | おすすめ度 |
【悪人伝】(2019) | ★3.8 | 83 |
【夏時間】 | ★3.9 | 82 |
【藁にもすがる獣たち】 | ★3.7 | 84 |
【V.I.P. 修羅の獣たち】 | ★3.6 | 83 |
【偽りの隣人 ある諜報員の告白】 | ★3.7 | 82 |
【非常宣言】 | ★3.9 | 85 |
【犯罪都市】 | ★3.8 | 85 |
【犯罪都市 THE ROUNDUP】 | ★4.0 | 86 |
みんな大好きマ・ドンソクに結構顔なじみな俳優さんが出ている作品ばかりです。
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