今回ご紹介する作品は【ゾディアック】【トライアングル】【9人の翻訳家 囚われたベストセラー】【ドラゴンタトゥーの女】【オリエント急行殺人事件】【ナイル殺人事件】の6作品をネタバレしない程度に紹介します。
ミステリー、サスペンス映画や小説ってある程度見ていくと、どこかで既視感を感じちゃって確かに面白いんだけど妙に頭に残らないことがありますが、そんな中でも私の頭の中にドッカーンと強い印象を残した作品たちです。
【ゾディアック】(2006)
評価★3.5 おすすめ度82
監督:デヴィッド・フィンチャー 脚本:ジェームズ・ヴァンダービルト
出演者:ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・Jr、アンソニー・エドワーズ、ブライアン・コックス、イライアス・コティーズ、クロエ・セヴィニー、ドナル・ローグ、ジョン・キャロル・リンチ、ダーモット・マローニー、リッチモンド・アークエット、ボブ・スティーヴンソン、ジョン・テリー、ジョン・ゲッツ、キャンディ・クラーク、フィリップ・ベイカー・ホール、ジェイソン・ワイルズ、マット・ウィンストン、ザック・グルニエ、アダム・ゴールドバーグ、ジェームズ・レグロス、クレア・デュヴァル、ポール・シュルツ、ジョン・レイシー、エド・セトレキアン、ドーン・リー、ペル・ジェームズ、リー・ノリス、ジョエル・ビソネット、トーマス・コパッチ、バリー・リヴィングストン、クリストファー・ジョン・フィールズ
ストーリー
1969年7月。カリフォルニア州でカップルが銃撃され、女性が死亡する事件が発生。しばらくして、犯人から新聞社に犯行を告白する手紙が届く。やがて、事件は世間の注目を集めると共に新たな事件が発生。新聞記者や漫画家など、4人の男たちが真相を追うが…。
解説
zodiacと名乗る犯行声明のあった連続殺人事件を題材に、真相究明に当たる人々を描いている実話ベースのお話。
監督が子供時代に経験した事をベストセラーのゾディアックという本をベースに、自分でも生き残った被害者や目撃者に話を聞いた上で非常にリアルに描こうとしたところ、原稿だと長さが200分以上になりそうなので早口と短めのカットを組み合わせた作品らしいです。当時の街や警察もゾディアックの影響がいつまで続くのかと、うんざりしていてそれを体感させるために長い長い映画にしたとか。2人の容疑者、模倣犯、虚偽のタレコミ、証拠はたくさんあるのに確証に欠け、事件にのめり込むあまり事件の一部になりそうなシーンはハラハラします。CGを使用し当時の街並みを描いていたり一つ一つが細かく丁寧に描いていて面白く、事件を追う新聞社付きの漫画家のジェイク・ギレンホールと、捜査を最後まで担当する刑事のマーク・ラファロの演技も熱いです。
未解決事件なのでこれだけの長さでありながら結末だけがスッキリしないかもしれませんが、事件そのものや警察や新聞社の捜査や報道の過程、関係者の情熱や失望も丁寧に描かれていて、ダレることもなく最後までハラハラドキドキした展開で楽しめる作品です。
【トライアングル】(2009)
評価★3.5 おすすめ度86
監督:クリストファー・スミス 脚本:クリストファー・スミス
出演者:メリッサ・ジョージ、マイケル・ドーマン、レイチェル・カーパニ、ヘンリー・ニクソン、エマ・ラング、リアム・ヘムズワース
ストーリー
ヨットセーリングに行ったジェスらは、嵐に襲われ大海原へ投げ出されてしまう…命からがら助かった5人の前に、突然豪華客船が現れる。人の姿が見えない船内を調べていると突然、覆面をした謎の人物が現れ、次々に命を奪われていく。
解説
主人公一向がヨットで難破して大型客船に乗り込んでから不可思議な出来事に遭遇するタイムループ系ミステリー。
冒頭で既にストーリーが終わっていると言ってもいいくらい綺麗にループしていて、100分という割と短い尺の中で前半に散りばめられた伏線が後半で綺麗に回収されて、比較的ループものとしては理解もしやすいと思います。ただ同じ時間を繰り返す、やり直す、っていうタイプのいわゆるタイムリープとは違って、1周目・2周目・3周目…が複雑に絡み合って影響し合っているのが、話を見応えのあるものにしています。物語終盤、断片的な情報をかき集めループを脱出する方法を入手したジェスが覚悟を決めてからの流れは秀逸で、やや説明過多な気はしますが、心臓がバクバクするような空恐ろしい世界を描いています。
低予算ながら世界観は狭いようで広く、そして隅々まで行き届いている秀作で、緻密に練られた物語と散りばめられた伏線の数々が面白く、物語が進めば進むほど、序盤のキャラクター達の表情や展開を見返したくなる作品です。
【9人の翻訳家 囚われたベストセラー】(2019)
評価★3.7 おすすめ度87
監督:レジス・ロワンサル 脚本:レジス・ロワンサル
出演者:ランベール・ウィルソン、オルガ・キュリレンコ、アレックス・ロウザー、シセ・バベット・クヌッセン、リッカルド・スカマルチョ
ストーリー
フランスの人里離れた村にある洋館。全世界待望のミステリー小説「デダリュス」完結編の各国同時出版のため、9カ国の翻訳者が集められた。外部との接触は一切禁止され、日々原稿を翻訳する。しかしある夜、出版社社長のもとに作品流出の脅迫メールが届き…。
解説
世界的大ヒット小説”デダリュス”の翻訳を巡り、閉ざされた空間で起こるある事件の物語。実際に”ダ・ヴィンチ・コード”シリーズの『インフェルノ』出版の際に、各国の翻訳家が地下室に隔離されて翻訳を行ったことをモチーフにした作品。
序盤は割と退屈かもしれませんが、中盤の早い段階で犯人が明かされ、そこから終盤にかけて二転も三転もの大どんでん返しがあるので飽きずに集中して見入ってしまいます。犯人が明かされるところから加速して面白くなっていくので、状況をしっかり理解して把握していないと、こんがらがり話についていけなくなるかもしれません。小さなミスリードの繰り返しから最後の大オチの出し方、全て計算づくのそれこそミステリー小説のような脚本で、観ていて小さくも大きくも様々なところで裏切られるストーリーはすごく面白いです。
導入と結末部分が交互に混じり合いながら進んでいくためやや複雑なストーリーだと感じるかもしれませんが、後でしっかり回収できる見事に面白い展開になっていて、もう一度見返したくなる良質なミステリー作品だと思います。
【ドラゴンタトゥーの女】(2011)
評価★3.8 おすすめ度86
監督:デヴィッド・フィンチャー 脚本:スティーヴン・ザイリアン
出演者:ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、スティーヴン・バーコフ、ステラン・スカルスガルド、ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン、ベンクトゥ・カールソン、ロビン・ライト、ゴラン・ヴィシュニック、ジェラルディン・ジェームズ、ジョエリー・リチャードソン、インガ・ランドグレー、ペル・ミルバーリ、マッツ・アンデション、イーヴァ・フリショフソン、ドナルド・サンプター、エロディ・ユン、ヨセフィン・アスプルンド、エンベス・デイヴィッツ、ウルフ・フリベリ、ジュリアン・サンズ、マーティン・ジャーヴィス、アーリー・ジョヴァー、アラン・デイル、ジョエル・キナマン
ストーリー
経済誌「ミレニアム」を発行するジャーナリストのミカエル。ある日、彼は40年前に起きた少女失踪事件の真相究明を依頼され、その過程で天才ハッカーの女性・リスベットを紹介される。やがて2人は連続猟奇殺人事件と関連があることを突き止め…。
解説
スウェーデンの小説を映画化したミレニアム三部作の1作目”ドラゴンタトゥーの女”のハリウッドリメイク版。有能な記者と天才ハッカーの女が40年前の少女失踪事件の謎を解く。
ミステリー映画とは言っても、核に据えるはそのミステリーの答えなどではなく、男性優位の社会構造を暴き、女性蔑視と暴力を糾弾”性差別”がテーマとなっています。かなり心にくる描写がありますが話自体はサクサクと進み、謎が解明されるテンポがよく、2時間半と長尺ですが目が離せなくなります。細かな伏線も回収されるので細部まで見どころが多く、登場人物の心理描写も細かく表現されててお互いの関係性もすごく絶妙で面白いです。兎にも角にも、リスベット・サランデルという人物を見事に演じたルーニー・マーラは誰が見ても大金星でしょう。この話は”ヴァンゲル家の謎”では無く、あくまでも”ドラゴン・タトゥーの女”の話で彼女の物語にダニエル・クレイグが少しだけ色を加えたに過ぎません。ほんとデヴィッド・フィンチャー監督はこういうダークなサスペンスの作り方が物凄くうまいです。
登場人物が多く、名前も難しく覚えづらいので少し難解に感じるかもしれませんが、オープニングの音楽と映像から素晴らしく、北欧の少し暗く重い雰囲気と”異常者”が作り出す大胆で張り詰めた雰囲気が楽しめ、ラストまでダークでハードな世界観とサスペンスに浸り続けられる作品です。
【オリエント急行殺人事件】(2017)
評価★3.5 おすすめ度85
監督:ケネス・ブラナー 脚本:マイケル・グリーン 原作:アガサ・クリスティ
出演者:ケネス・ブラナー、ジョニー・デップ、ミシェル・ファイファー、ジュディ・デンチ、ペネロペ・クルス、デイジー・リドリー、ウィレム・デフォー、ルーシー・ボイントン、レスリー・オドム・Jr、デレク・ジャコビ、トム・ベイトマン、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、ジョシュ・ギャッド、セルゲイ・ポルーニン、マーワン・ケンザリ、オリヴィア・コールマン
ストーリー
豪華寝台特急「オリエント急行」に乗車した名探偵、エルキュール・ポアロ。雪崩で立ち往生した車内で、アメリカ人の富豪・ラチェットが何者かに殺害される。捜査を依頼されたポアロは乗客たちに聞き込みを始めるが、全員にアリバイがあることが判明する。
解説
偉大なイギリスの作家ミステリーの女王とも呼ばれたアガサ・クリスティの名作『オリエント急行の殺人』を二度目の実写映画化した作品。オリエント急行の列車内で起こった、殺人事件の犯人を探偵のポアロが推理で追い詰めていく話。
有名すぎる原作で、他のミステリー小説や、ドラマ、漫画でもリメイク作品があるため、ストーリーには新しさはありません。ただ、ポアロが一つ一つ謎を解いていく推理の過程が細かく描かれているため、原作ファンの心も掴むような内容だと思います。原作などを全く知らない人が観ると、犯人に必ず驚くでしょう。すでに結末が知られている古典ではありますが、豪華キャスト陣で描かれる群像劇と映像美で、映画らしい映画に仕上がっています。真相を探っていくシーンも展開よく、原作にはないアクションシーンも交えて最後まで飽きさせません。監督&主演を担ったケネス・ブラナーは、映画人として相変わらず堅実な仕事を全うしていて、オーソドックスではあるものの、一つ一つのシーンやカットはとても丁寧に作り込まれています。
長年愛されるストーリーは、犯人が分かっていても、ついつい見てしまう不思議な引力があり、ただ敢えてオーソドックスにリメイクされることが、映画史の文脈において価値があることもあり、本作はまさにそういう類の作品だと思います。
【ナイル殺人事件】(2022)
評価★3.6 おすすめ度86
監督:ケネス・ブラナー 脚本:マイケル・グリーン 原作:アガサ・クリスティ
出演者:ケネス・ブラナー、アーミー・ハマー、レティーシャ・ライト、ガル・ガドット、トム・ベイトマン、アネット・ベニング、ローズ・レスリー、ラッセル・ブランド、アリ・ファザル、ドーン・フレンチ、ソフィー・オコネドー、ジェニファー・ソーンダース、エマ・マッキー
【オリエント急行殺人事件】の続編
ストーリー
大富豪の美しき娘の新婚旅行中に、クルーズ船内で起きた連続殺人事件。容疑者は、結婚を祝うために集まった乗客全員。誰が何のために殺したのか?密室で起こった愛と嫉妬と欲望が複雑に絡みあう連続殺人事件に、世界一の名探偵・ポアロが挑む。
解説
アガサ・クリスティ原作、名探偵ポアロ(ケネス・ブラナー)の活躍を描いた2作目の作品。今回は豪華客船で起こる連続殺人事件を解決するミステリー。
前作【オリエント急行殺人事件】の寒々しい景色から一転、砂漠とオアシスと大河というエジプトの見事に美しい映像に魅了され、そこにガル・ガドットの優雅さが加わって圧巻。もちろん原作の面白さがある上に、人種差別やセクシャリティを絡めて現代風にアレンジして、シーン毎にいくつものほのめかしを散りばめて、何度も見返したくなってしまうところも、ケネス・ブラナーはさすがだと思います。そして、冒頭の第一次大戦の白黒映像の中に、ラストまで引っ張り続ける愛とポワロの関係を埋め込んでいるところがニクいです。ストーリーは最近のミステリーものでよくあるコミカルな笑いとかは一切ない王道なタイプですが、様々な恋愛が絡んでおり、ラストに近づくにつれ、かなりテンポ良くハラハラするので申し分ありません。
上映時間の2時間、ずっとこの作品の掌の上で踊らされていたと感じる謎解きシーンは何とも言えない爽快感があり、映像が美しく華があるサスペンスで飽きることなく観れる作品です。
まとめ(評価とおすすめ度)
タイトル | 評価★ | おすすめ度 |
【ゾディアック】 | ★3.5 | 82 |
【トライアングル】 | ★3.5 | 86 |
【9人の翻訳家 囚われたベストセラー】 | ★3.7 | 87 |
【ドラゴンタトゥーの女】 | ★3.8 | 86 |
【オリエント急行殺人事件】 | ★3.5 | 85 |
【ナイル殺人事件】 | ★3.6 | 86 |
評価はそんなに高くはないようですが、個人的にはどれもとても面白かったです。
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