今回ご紹介する作品は【ショコラ】【ヘルプ ~心がつなぐストーリー~】【女神の見えざる手】【デトロイト】【ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書】の5作品をネタバレしない程度に紹介します。
社会派映画とは、現代社会で生じている問題・闇を、登場人物の惨状や心理的な葛藤で分かりやすく表現した作品を指します。社会派映画では『企業や組織の腐敗』『特定の人種に対する差別』『犯罪事件』の3つのジャンルに大きく分けられます。
【ショコラ】(2000)
評価★3.6 おすすめ度83
監督:ラッセ・ハルストレム 脚本:ロバート・ネルソン・ジェイコブス
出演者:ジュリエット・ビノシュヴィクトワール・ティヴィソルジョニー・デップアルフレッド・モリナヒュー・オコナーレナ・オリンピーター・ストーメアジュディ・デンチキャリー=アン・モスレスリー・キャロンジョン・ウッド
ストーリー
フランスの小さな村にやってきたヴィアンヌと娘・アヌーク。2人は老女から借りた物件でチョコレート店を開き、その不思議なおいしさで人々の眠っていた情熱を目覚めさせていく。だが敬虔で厳格な村長・レノ伯爵は、ヴィアンヌの店を悪魔的だと言い出し…。
解説
流浪の民の主人公とその娘が、引っ越し先の街でチョコレート屋を開き、チョコレートを通して街の人々と関わり、禁欲思想に縛られた街の人の心を解いていく物語。
甘党にはたまらない、美味しそうなお菓子がたくさん出てきます。ストーリー・映像・音楽・役者のバランスが良く、チョコレートのように滑らかな舌触りで流れていきます。ヒューマンドラマなんだけど、街並みからインテリアまでおしゃれで可愛らしく、ちょっとファンタジーな雰囲気で、チョコレートを通して人々の固くなった心がほぐれていくような、そんな優しいお話。破綻のない寓話的な作りは、予定調和にも思えますが、見た後でハッピーになれる映画です。ジョニー・デップ目当てで観る方もいると思うが、ジュリエット・ビノシュが寡黙でどこか神秘的なヒロインを魅力的に演じる他、アルフレッド・モリーナ、ジュディ・デンチ、レナ・オリンらの演技にも注目してほしいです。
ストーリーのテーマとしては宗教と抑制、禁じることVSチョコレートあるいは、欲望または解放、受け入れることといった感じですが、宗教を扱ってる割には激しすぎず、音楽のセンスも良く、魔法のような、おとぎ話のような優しさがありながら、現実的でリアルなシーンも結構ある、甘さと苦さを堪能出来る作品だと思います。
【ヘルプ ~心がつなぐストーリー~】(2011)
評価★4.0 おすすめ度85
監督:テイト・テイラー 脚本:テイト・テイラー
出演者:エマ・ストーン、ヴィオラ・デイヴィス、オクタヴィア・スペンサー、ブライス・ダラス・ハワード、ジェシカ・チャステイン、アリソン・ジャネイ、シシー・スペイセク、シシリー・タイソン、メアリー・スティーンバージェン、アンナ・キャンプ
ストーリー
1960年代のミシシッピ州。作家志望の白人女性スキーターは、家事の新聞コラムを執筆するため黒人メイドのエビリーンに相談する。やがて黒人メイドの扱いに疑問を抱いたスキーターは、メイドたちに取材を試みる。だが、彼女らは報復を恐れて口を閉ざし…。
解説
1960年代、人種差別があった時代に、白人家庭でメイドとして働く黒人女性たちとジャーナリスト志望の若い白人女性との人間ドラマ。
人種差別がテーマの作品は暗くて重たい印象がありますが、これは所々ユーモアがあるので重くなりすぎないし安定感もあって丁度いい気持ちで観れると思います。差別問題をテーマにした映画は沢山ありますが、黒人側or白人側の片方からの目線がメインで描かれた作品が多い印象。しかしこの映画は両者からの目線でバランスよく描かれており、どちら側にも感情移入できると思います。そしてほぼ女性だけで話が進んでいく興味深いストーリー、ここまで女性中心であり、女性のみが主役ともいえる映画は早々ないかもしれません。女性目線でいけば【グリーンブック】よりも観やすいと思います。
2時間半と長尺ですがテンポが良いので長く感じず、60年代のファッションやインテリアのセットが可愛いいので視覚的にも楽しめ、黒人女性のメイドたちと作家志望の若い白人女性との友情を通して、黒人差別に対して、一人の女性の勇気が社会を揺るがすことになる、とても心に刺さる作品です。
【女神の見えざる手】(2016)
評価★4.0 おすすめ度88
監督:ジョン・マッデン 脚本:ジョナサン・ペレラ
出演者:ジェシカ・チャステイン、ググ・バサ=ロー、マーク・ストロング、アリソン・ピル、ジョン・リスゴー、マイケル・スタールバーグ、ジェイク・レイシー、サム・ウォーターストン、ダグラス・スミス、ディラン・ベイカー、カイル・マック、エニス・エスマー、メーガン・フェイ、クリスティーン・バランスキー
ストーリー
大手ロビー会社で辣腕をふるうエリザベスは、銃擁護派団体から仕事を依頼される。だが、自らの信念に反する仕事はできないと、銃規制派の小さなロビー会社に移籍。大胆な戦略で形勢を有利に変えていくが、彼女の過去のスキャンダルが暴かれ…。
解説
アメリカの議会で銃規制法案を通そうとする側と、それに反対する側がそれぞれロビイストを雇って対立するお話。
日本では馴染みのないロビイストはじめ、聞きなれない言葉ばかりで最初はピンときませんが、観ているうちになんとなく分かってくると思います。ロビイストという特異な職業を題材にしている点が数ある社会派の中でも特に目新しさがありますし、銃規制の可否という現代アメリカにおいて今まさにホットな焦点はタイムリー性があります。銃規制法案の可否を決定する議員の獲得数を巡る銃規制賛成派vs反対派の頭脳的攻防が繰り広げられるサスペンスであり、議員への接触を図り賛成派に取り込もうとするエリザベスら規制賛成派と、賛成派ロビイストのプライベートの暴露や政治的駆け引きの範疇を飛び越えて悪質な犯罪行為にまで手を出し始める規制反対派の、策略と陰謀が迫真性をもって活写されています。完璧かつ冷徹なヒロインが仕掛ける、相手の裏をかいた巧妙な戦略と驚愕の逆転劇が社会派映画らしい“正義のカタルシス”を堪能させてくれます。
1秒もダレることがなく終始、緊迫感ただよう社会派サスペンスで、軽快なテンポとお堅いテーマをかなり分かりやすく見せながら進むため、見終わった後の疲労感も少なく、銃社会は日本にいるとあまりイメージがありませんが、倫理観について考えさせられますし、凄い作品を観た!というのが率直な印象の作品です。
【デトロイト】(2017)
評価★3.9 おすすめ度87
監督:キャスリン・ビグロー 脚本:マーク・ボール
出演者:ジョン・クラシンスキー、ケイトリン・デヴァー、ウィル・ポールター、ジャック・レイナー、ハンナ・マリー、ジョン・ボヤーガ、アンソニー・マッキー、タイラー・ジェームズ・ウィリアムズ、アルジー・スミス、ジェイソン・ミッチェル、ジェイコブ・ラティモア、ラズ・アロンソ、マルコム・デヴィッド・ケリー、ジェレミー・ストロング、クリス・チョーク、レオン・トマス三世
ストーリー
1967年7月、暴動発生から3日目の夜。若い黒人客でにぎわうモーテルに、銃声を聞いたとの通報を受けた警官と州兵が殺到した。警官たちはモーテルに居合わせた若者に暴力的な尋問を開始。それは異常な“死のゲーム”へと発展し、新たな惨劇を招き寄せていく。
解説
1967年デトロイト、アルジェ・モーテルで実際に起きた事件をスリリングに描く。
1967年に起きたデトロイト暴動を当時の事件現場に居合わせた男女3人をコーディネーターとして招いて作られたというのだから、ほとんどが実際に起こった事だと言う認識で良いと思われます。ちなみに無罪になった白人警官達は全て映画用の偽名ですが、これは当人達の許可が下りなかったからだそうです。ドキュメンタリータッチなカメラワークも、この作品には凄くハマっていますし他の監督ならざっくりカットしてもう少しコンパクトにしそうな尋問シーンも、敢えて冗長に撮ってる辺り挑戦的で改めてキャスリン・ビグロー監督って凄いなと思います。とにかく緊迫感が凄く変にうるさい音楽も流れませんし、リアル風な撮り方といい役者陣の演技といい疲れますが観た後の満足感は高いです。
黒人差別を描いている作品の中でも、かなり後味の悪いラストを迎えますが、娯楽映画じゃなく真実を描いた映画ですし、アメリカひいては人間社会にある暗部を浮き彫りにする衝撃の事件を描いた、閉鎖空間における、権力の名を語りながら暴力によって行使される偏見に満ちた非人道的な行為の数々に胸を衝かれるセンセーショナルな一作だと思います。
【ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書】(2017)
評価★3.8 おすすめ度84
監督:スティーヴン・スピルバーグ 脚本:リズ・ハナー、ジョシュ・シンガー
出演者:メリル・ストリープ、トム・ハンクス、アリソン・ブリー、サラ・ポールソン、キャリー・クーン、ブルース・グリーンウッド、ジェシー・プレモンス、デヴィッド・クロス、ボブ・オデンカーク、ブラッドリー・ウィットフォード
ストーリー
1971年、アメリカ。国内に反戦の気運が高まるなか、国防総省がベトナム戦争についてまとめた文書が流出し、ニューヨーク・タイムズがその一部をスクープ。ワシントン・ポストのトップ・キャサリンと編集主幹・ベンは残りの文書の全貌を公表しようとするが…。
解説
報道の自由の為に闘った新聞社の面々とニクソン大統領政権とのやり取りを実話をベースにスティーブン・スピルバーグ監督が、メリル・ストリープ✕トム・ハンクスという豪華絢爛なキャストで描く。
国家的機密文書の秘匿性と報道の自由を民主主義という土台の上で天秤をかける話になっており、最初に機密文書を手に入れてスクープしたNYタイムスでなく、後追いになったワシントン・ポストを主役にしている点がストーリーを面白くしています。最終的に報道する側が一丸となって政府と戦う展開は否が応でも盛り上がります。トム・ハンクスとメリル・ストリープという名役者が霞む程、脚本が良い作品で、”起承転結”以上の素晴らしい構成配分、コマ割り、場面展開に息をのみます。
図らずも新聞社のトップになってしまったメリル・ストリープが、繊細さと芯の強さを兼ね備えた女性を見事に演じており、ラストの壮大なカタルシスへと繋がっていき、現代のアメリカや日本が直面している『政治における隠蔽体質』にメスを入れようという監督の信念が詰まった見ごたえある作品です。
まとめ(評価とおすすめ度)
タイトル | 評価★ | おすすめ度 |
【ショコラ】 | ★3.6 | 83 |
【ヘルプ ~心がつなぐストーリー~】 | ★4.0 | 85 |
【女神の見えざる手】 | ★4.0 | 88 |
【デトロイト】 | ★3.9 | 87 |
【ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書】 | ★3.8 | 84 |
難しいテーマですが、ほっこりする作品からハラハラドキドキする作品まで色々とあります。
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