今回ご紹介する作品は【ナイチンゲール】【ドッグマン】【異端の鳥】【悪魔を見た】【怪怪怪怪物!】の5作品をネタバレしない程度に紹介します。
胸がむかむかするほど不快であり、いまいましい作品ですが何故か気になって観たくなってしまう鬱映画作品たちです。
【ナイチンゲール】(2018)
評価★3.7 おすすめ度82

監督:ジェニファー・ケント 脚本:ジェニファー・ケント
出演者:アイスリング・フランシオシ、サム・クラフリン、バイカリ・ガナンバル、デイモン・ヘリマン、ハリー・グリーンウッド、ユエン・レスリー、チャーリー・ショットウェル、サム・スミス
ストーリー
19世紀、オーストラリア。流刑囚のアイルランド人・クレアは、その美しい容姿と歌声から英国軍将校・ホーキンスに囲われていた。クレアの夫・エイデンは、彼女が刑期を終えた後も釈放されないことに不満を持ち、ホーキンスに交渉を試みるが…。
解説
囚人のアイルランド女性クレアは同じく囚人だった男との間に子供をもうけるが、イギリス軍人たちにレイプされた上に夫子を殺されてしまい、その復讐劇を描く作品。
クリミアで白衣の天使と呼ばれたあの方ではなく、ナイチンゲールは鳥の名前。凄まじいリアリティで人間の醜さを描いています。クソなヤツはクソだしクソでもないやつもクソになるし報われないし、主人公の行動が正しいわけでもなく迷いまくるし総てが愚かさにまみれています。だが、そうやってこの世の中の極めて現実的な不条理を生々しく描き切ることで、その先に微かに見える誇りや尊さの輝きが極めて美しく映し出しています。とてつもない信念の人で無ければ、こんなに愚直で燃費の悪い非効率な映画は生み出せないと思います。賞賛と同時に間違いなく批判を受ける覚悟のある者にしか、こんな表現は出来ません。茨の道をそれと知ってここまで突き進み形にした、こんな監督が今の時代にもいて作品を生み出してくれている事に我々は感謝した方が良いでしょう。本作にはそう言わしめるだけの景色が在ります。
ストーリーに容赦が無く救いも少なく、二時間越えの作品ですが筋書きがシンプルで人間関係も分かりやすく、人間の醜さ、脆さ、残虐性、全部を浮き彫りしていて、階級世界に揉まれながらも人間性の成長が見られるドラマが観られ、救いようないところから這い上がるスカッと映画が観たい方におすすめな作品です。
【ドッグマン】(2018)
評価★3.6 おすすめ度80

監督:マッテオ・ガローネ
出演者:マーセロ・フォンテ、エドアルド・ペーシェ、アリダ・バルダリ・カラブリアア、ダモ・ディオジーニ、フランチェスコ・アクアローリ、ジャンルカ・ゴビ
ストーリー
海辺の町でトリミングサロンを営むマルチェロ。犬を愛する彼は、ささやかだが幸せな日常に満足していた。だがその一方、暴力的な友人・シモーネの支配から抜け出せずにいる彼は、ある日儲け話の片棒を担がされ、代償として周囲の人々の信用を失ってしまう。
解説
気弱なトリマーの男マルチェロが町一番の不良シモーネに良いように利用され、そのせいで近所の友人達の信頼すらなくしてしまう超不条理な話。
主人公の場合、シモーネあるいは他の友人達と作る地元コミュニティーという二つの帰属先の狭間に身を置いているケースであり、一方を取ればもう一方は自然と失われていく二者択一の状況下にあります。本作は、人間の帰属を巡る寓話的サスペンスであり、“人類最良の友”と都合よく言われながらも結局は人間に従わざるを得ない存在の何匹もの犬たちが象徴的に登場する異色作です。大人版ジャイアントとのび太の関係を描いたような話で、対話不能で暴力的なので孤立してる厄介な幼なじみなのですが、頼まれたら助けてしまう共依存関係的な友情が怖くも面白く、どちらも自分が飼い主と思いながら接してる間柄で、状況が飛躍していくのを冷たい目線映す恐ろしい映画だと思います。
主人公と犬の関係性また主人公とシモーネの関係性を通じて、特定の人物や組織等に無意識のうちに帰属して生きる人間の本質を眺めた作品となっています。
【異端の鳥】(2019)
評価★3.8 おすすめ度84

監督:ヴァーツラフ・マルホウ
出演者:ステラン・スカルスガルド、ハーヴェイ・カイテル、バリー・ペッパー、ジュリアン・サンズ、ウド・キア
ストーリー
ホロコーストを逃れ、東欧のどこかに疎開した少年。預かり先の老婆が病死し、火事で家が消失したことで、少年は旅に出ることになる。行く先々で彼を異物と見なす周囲の人間のひどい仕打ちに遭いながらも、彼は何とか生き延びようと必死でもがき続ける。
解説
第二次世界大戦中、ユダヤ人へのホロコーストから逃れた少年の過酷な道程を描いた作品。
シネスコで白黒、しかもセリフも少なくて淡々とした筆運びの映画なのですが、生きていくしか選択肢がないのに、生きていくための選択肢がない弱者の姿はとても壮絶なもので、全く目を離す瞬間がないほど説得力のあるドラマに仕上がっていると思います。ストーリー的にも、ほとんど山も谷もなく、どん底の状態がひたすら延々と続くだけですが、一つ一つのエピソードの積み重ねの中で少年が少しずつ変質を遂げざるを得なくなることにリアリティが生まれていますし、ラストの鳥の姿に途方もない解放感があります。モノクロのせいか、生き様が人々の顔のシワにより深く刻み込まれて見え、かつセリフもほぼ無く目や表情、行動から全てを訴えてくることから、余計に人の様のインパクトが強いです。
”人間性は誰からも奪ってはならない”というメッセージを持つ、人道主義の啓蒙映画で、人類の残虐性を究極の映像美で描く、間違いなく忘れることのできない作品だと思います。
【悪魔を見た】(2010)
評価★3.7 おすすめ度83

監督:キム・ジウン 脚本:パク・フンジョン
出演者:イ・ビョンホン、チェ・ミンシク、オ・サナ、チョン・グクァン、チョン・ホジン、キム・ユンソ、チェ・ムソン、キム・インソ、チェ・ジノ
ストーリー
婚約者を何者かに惨殺された国家情報院の捜査官・スヒョン。独自に捜査を開始した彼は、ギョンチョルという中年男が犯人であることを突き止める。新たな犯行におよんでいた彼を襲撃したスヒョンは、昏倒させるとGPSカプセルを飲み込ませて立ち去ってしまう。
解説
強姦殺人鬼に妊娠中の妻を惨殺された国家情報部員のイ・ビョンホンが殺人鬼のチェ・ミンシクに復讐をする話。
結構あっさり復讐対象に辿り着いてしまうので、少し肩透かしを喰らった気がしますが、この映画はそこからが始まりです。犯人を追跡し、心理戦を楽しむ映画ではなく、犯人を特定した後、犯人に残酷な暴力を繰り返す、残酷なだけの映画になるのが面白いです。内容は稀に見るほどの胸糞ですが、演出面には息を呑みます。特に快楽殺人犯を演じたチェ・ミンシクが圧巻で、スヒョンの行動は少し解せない部分はあるものの、怒りと哀しみが入り混じる複雑な感情を繊細に演じています。イ・ビョンホンも見事で、無表情な演技が比較的見受けられますが例えようのない悔恨の念、やるせ無さと喪失感を感じさせます。目を塞ぎたくなるくらいの痛々しいシーンが多く、もろにグロいところを写すシーンも多いので見る人を選びますが、韓国映画の容赦ない復讐がダイレクトに伝わります。
起承転結転承結!みたいな普通の映画なら、ここで終わるという予想を上まってくる韓国映画は流石で、大衆受けコンプラガン無視、エログロ汚物を一切躊躇なく描写してるあたり本当にいい映画を作ろうとしてるエネルギーが凄い!そんな作品だと思います。
【怪怪怪怪物!】(2017)
評価★3.7 おすすめ度84

監督:ギデンズ・コー 脚本:ギデンズ・コー
出演者:トン・ユィカイ、ケント・ツァイ、ユージェニー・リウ、キャロリン・チェン、ジェームズ・ライ、タオ・ボーメン、リン・ペイシン
ストーリー
いじめられっ子のシューウェイは、ある日いじめっ子3人と奉仕活動を命じられる。独居老人の世話をすることになった彼らは、2匹のモンスターと遭遇し、小さい方のモンスターを捕まえて独自の実験を始める。やがてモンスターは彼らの手に負えなくなっていき…。
解説
いじめられっこが虐めてた奴らと一緒に人喰いの化け物を拾い、監禁することになると言う話。
いわゆるモンスター映画にジャンルされる作品ですが、“善とは何か、悪とは何か”を問いかけた気鋭の作劇が特徴となっていて、妹を奪われた怪物の存在以上に、無力な怪物に対して執拗に拷問を加えるいじめっ子たちのサイコパスな思考と行状が何より卑劣な本当の“悪”として浮かび上がっていきます。いじめられっ子だった主人公も怪物との出会いを機としたいじめっ子たちとの交流の中で図らずも悪に加担していく一方で、駄菓子屋で働く知的障害のある青年やクラスでのけ者にされている太っちょ女子だけは無垢なる善として最後まで貫き通される等、二匹の怪物を中心に人々の善と悪が対比されています。
表向きは人喰いモンスターホラーですが、その実、人間の屈託のない残酷性を暴いた作品で、姉貴怪物による殺戮シークエンスの凄惨な光景は視覚的なインパクトが絶大であり、人間の本質と業をメインテーマとして描きつつもグロテスクな怪物映画としてのフレームを堅持させている点が出色の出来となった異色の台湾ホラー作品です。
まとめ(評価とおすすめ度)
タイトル | 評価★ | おすすめ度 |
【ナイチンゲール】 | ★3.7 | 82 |
【ドッグマン】 | ★3.6 | 80 |
【異端の鳥】 | ★3.8 | 84 |
【悪魔を見た】 | ★3.7 | 83 |
【怪怪怪怪物!】 | ★3.7 | 83 |
救いが少ない映画ばかりなので人によっては後味悪い映画ばかりかもしれません。
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