今回ご紹介する作品は【ドラゴン×マッハ!】【SPL/狼たちの処刑台】【レイジング・ファイア】【導火線 FLASH POINT】【孫文の義士団】の5作品をネタバレしない程度に紹介します。
香港は150年以上にわたってイギリス植民地であり1997年に中国に返還されました。それに伴い中国市場を意識した大味な中国との合作映画が増えて、かつての輝きを失いました。さらに近年の民主化運動や、それに対する中国政府の締め付け強化に、香港映画の将来を不安視する声が高まっています。表現の自由に対する規制が強まる中、これから香港映画はどんな進化を遂げるのでしょうか。
【ドラゴン×マッハ!】(2015)
評価★3.9 おすすめ度83
監督:ソイ・チェン 脚本:レオン・ライイン Ying Wong
出演者:トニー・ジャー、ウー・ジン、サイモン・ヤム、ルイス・クー、マックス・チャン
【SPL/狼よ静かに死ね】の続編
ストーリー
潜入捜査官・チーキットは任務中に正体がばれてしまい、臓器売買の拠点となっているタイの刑務所に監禁される。看守・チャイはチーキットに執拗な暴行を加える刑務所の所長に正義感から怒りを覚えるが、ある恩義からその行為に見て見ぬふりをするしかなく…。
解説
タイトルから分かりにくいですがSPLシリーズの第二弾。臓器売買を巡るアクション映画。話が繋がっているわけではないので、単発で観ても大丈夫です。
タイの至宝ことトニー・ジャーと大陸No. 1アクションスターのウー・ジンが共演して、すざましいアクションを見せてくれます。ただ内容は若干、分かりづらく、また暗く凄惨な物語なので、もしかしたら観る人を選ぶかもしれません。刑務所でワンカットで見せるアクションシーンや、香港チェプコクラップ空港での大銃撃戦、ラストの悪玉マックス・チャンとの1VS2の壮絶な死闘など盛りだくさんで、チェーンやトンファーを使った格闘がアツく、格闘シーンは【マトリックス】を思わせる近未来的なイメージです。また脇役陣も豪華で前述のマックス・チャンやルイス・クー、サイモン・ヤム、ベイビージョン・チョイなど、香港を代表する俳優達が脇を固めています。
往年の香港映画を見慣れてる方には、強烈な残酷描写や複雑なストーリーに面喰らうかもしれないですが、これぞ香港アクション新世紀と言える作品だと思います。
【SPL/狼たちの処刑台】(2017)
評価★3.6 おすすめ度85
監督:ウィルソン・イップ 脚本:ニック・チェアック、レオン・ライイン
出演者:ルイス・クー、トニー・ジャー、ラム・カートン、ウー・ユエ、クリス・コリンズ、ジャッキー・ツァイ、ヴィタヤ・パンスリンガム
【ドラゴン×マッハ!】の続編
ストーリー
15歳の少女・ウィンチーは友人に会うためタイ・パタヤを訪れるが、そこで何者かに誘拐されてしまう。香港の警察官である父・リーは連絡を受け、自らの手で犯人たちから娘を奪還しようと決意。パタヤ警察のチュイに自分も捜査に同行させてほしいと申し出る。
解説
1作目も2作目も話の繋がりがなかったSPLシリーズ3作目。もちろん今作も前作との話の繋がりはありません。男手ひとつで育てた娘が誘拐され、娘を取り返すため誘拐した犯人への怒りを拳にのせて追い詰めるハードバイオレンスアクション。父親ハードボイルド映画。
この作品は一貫して如何にも父親的な過ちを悲劇の肝に据えつつ、腸煮えくり返る圧倒的理不尽の暴力性を揺るぎないものとして確立させているがために、まさに父親ハードボイルドに相応しいカタルシスがもたらされるのだと思います。娘を誘拐された主人公と近々父親になる刑事、という関係性も言わずもがな、それを特にラストで際立たせます。また、ハードさを際立たせる上ではこのジャンルになくてはならない、より過激でド派手かつ直接的に視覚を刺激してくるバイオレンスアクションが本作でも大炸裂していて、父親ハードボイルドの美味しさをマシマシにしてくれます。
香港版【96時間】ってな感じですが【96時間】よりも内容は重く、暗い、痛々しい、救いがないの三拍子が揃っておりますがドラマ性もあり、アクションもしっかり描かれた作品です。
【レイジング・ファイア】(2021)
評価★4.1 おすすめ度87
監督:ベニー・チャン 脚本:ベニー・チャン
出演者:ドニー・イェン、ニコラス・ツェー、チン・ラン
ストーリー
チョン警部が何年も追い続けた凶悪犯・ウォンの薬物取引に踏み込む日がやってきた。だが直前になってチョンのチームは作戦から外され、何者かが薬物を奪い去る。犯人は、かつてチョンを慕っていた元エリート警察官・ンゴウと彼の元部下たちだった。
解説
嘘も付けない生真面目な刑事と昔警察に裏切られ、復讐に駆られる元同僚との対決の物語。
自らの保身のために腐りきった警察のお上と、ヒーロー然とした主人公の正直者さに振り回され、組織から捨てられ裏切られ、哀しみを抱えたバーサーカーと化したかつての仲間の復讐という、予想を裏切らない展開なのに観た後は興奮冷めやらぬ状態になる、男子の心が刺激される感じの作品。編集のテンポの速さと、ヒーローのチョンとアンチヒーローのンゴウ両方のキャラクターの、怒りと悲しみに共感できるように説得力を持たせるための話の詰め込みのバランスが良いことと、スケール感が大きく安っぽさを感じない画面で、跳びまくり撃ちまくり爆発しまくり壊しまくりの派手なアクションと激しい音響など、とにかくダレないことを心掛けて作られていると思います。
2人のコインの表裏でありつつ、後戻りのできない因縁を描き続ける展開がラストのアクションをとにかく盛り上げる、内容が厚く純度も高い脚本が魅力的な作品だと思います。
【導火線 FLASH POINT】(2007)
評価★3.7 おすすめ度80
監督:ウィルソン・イップ 脚本:セット・カムイェン、ニコール・タン
出演者:ドニー・イェン、コリン・チョウ、ルイス・クー、ファン・ビンビン、レイ・ルイ、シン・ユー、ケント・チェン、シュイ・チン
ストーリー
中国への返還を間近に控えた1997年の香港。正義感が強過ぎるマーは、逮捕のたびに犯人に重傷を負わせる問題刑事。彼はベトナム人3兄弟率いる凶悪な犯罪組織を追っていた。そんななか、潜入捜査を行っていたマーの相棒・ウィルソンが正体を見破られ…。
解説
一ヶ月平均40人の容疑者を病院送りにする刑事、ドニー・イェンVS悪党三兄弟が戦う話。
ノイズにならない程度にシンプルな物語と異常なまでに高いアクションのクオリティが非常に心地よくマッチしていて、ドニー・イェンも美しいソバットと総合格闘技チックな寝技投げ技のハイブリット戦術で迫力も申し分ありません。ただタイトルのように導火線に火がつくまで中々に焦らされるので、しばらくドニー・イェン演じる主人公のマー刑事は手が早い以外はほとんど使い物になりません。気づけば仲間や身の回りの人たちが傷ついていき、マッチョなタンクトップ姿で悔やんでいるだけです。半分を過ぎたあたりから急転直下で主人公が怒り狂い、暴力の限りを尽くしていきます。ここからテンポが急激にアップし、もう瞬きすらも勿体無いレベルでド派手なアクションが展開されます。
短い時間でアクションあり、しょうもないギャグあり、潜入捜査あり、適度な暴力描写あり、難しいストーリーなし、といった非常にバランスのいい作品だと思います。
【孫文の義士団】(2009)
評価★3.6 おすすめ度82
監督:テディ・チャン
出演者:ドニー・イェン、レオン・ライ、ニコラス・ツェー、ファン・ビンビン、ワン・シュエチー、レオン・カーフェイ、フー・ジュン、エリック・ツァン、クリス・リー、サイモン・ヤム、チョウ・ユン、ワン・ポーチエ、メンケ・バータル、カン・リー
ストーリー
1906年、清朝打倒の気運が高まる香港に「孫文が密談のために1時間だけ香港に立ち寄る」という極秘情報がもたらされる。国の将来を左右するこの密談のため、急いで孫文護衛団が結成されるのだが、集められた8名は皆、各々事情を抱えた民衆で…。
解説
1906年、香港へ戻る革命家孫文を守る義士団と西皇后が送り込んだ500人の暗殺団の話。
前半はアクションは少々ありつつも、どっしりとしたドラマ&死亡フラグ立ちまくりの人情劇で、大事な前フリではあるものの中々長いので退屈に感じるかもしれません。しかしながら孫文が来てからの応酬は前半の伏線を回収しつつでとても楽しめると思います。後半、一時間ほぼリアルタイムで描かれるノンストップ・アクションは鳥肌もので、一撃や二撃ではびくともしないタフガイだらけの義士団、鉄扇を武器に奮闘するレオン・ライや、前半と後半で顔つきがガラリと変わるドニー・イェンのカンフーなど見どころ多数ですが、中でもカンフーを封印したニコラス・ツェーの魅力が溢れていています。
中国香港台湾にとって重要かつ繊細な事件である辛亥革命への道のりを描いたドラマに伝統アクションを詰め込んだエンターテイメント性の高い作品です。
まとめ(評価とおすすめ度)
タイトル | 評価★ | おすすめ度 |
【ドラゴン×マッハ!】 | ★3.9 | 83 |
【SPL/狼たちの処刑台】 | ★3.6 | 85 |
【レイジング・ファイア】 | ★4.1 | 87 |
【導火線 FLASH POINT】 | ★3.7 | 80 |
【孫文の義士団】 | ★3.6 | 82 |
もうアクションは全作品間違いありませんので後はストーリーの良さで少し評価に差が出ている感じですね。
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