今回ご紹介する作品は【リリーのすべて】【わたしはロランス】【トランスアメリカ】【ハンズ・オブ・ラブ 手のひらの勇気】【燃ゆる女の肖像】の5作品をネタバレしない程度に紹介します。
すでに存在している価値観を変えることは中々に困難です。ですから、場合によっては価値観が違う人どうしで誤解や争いが起こるのだと思います。私は価値観の違う人と出会うことは、新たな視点や考え方を学べるし、価値観が違うからこそ人生は面白いのだと思います。
【リリーのすべて】(2015)
評価★4.0 おすすめ度87
監督:トム・フーパー 脚本:ルシンダ・コクソン
出演者:エディ・レッドメイン、アリシア・ヴィキャンデル、アンバー・ハード、マティアス・スーナールツ、エイドリアン・シラー、ベン・ウィショー、セバスチャン・コッホ、エメラルド・フェンネル
ストーリー
1926年、コペンハーゲン。風景画家のアイナー・ヴェイナーは肖像画家の妻ゲルダと平穏に暮らしていたが、ゲルダに頼まれて女性モデル役を引き受けたのをきっかけに、自らに潜む女性の存在に気づいてしまう。苦悩を深めるアイナーに、ゲルダも戸惑うが…。
解説
世界初の性別適合手術を受けたデンマーク人画家リリー・エルベと、その妻ゲルダとの愛を描いた実話をもとに作られた伝記ドラマ。
画家の2人のストーリーということもあり構図も色彩のトーンも映像自体が絵画チックでとにかく美しいです。シーンの間にはさまる風景画のようなカットが印象的で、その画の中に映える衣装もまた良く隅々まで美しさが行き渡っている作品。
アイナーとリリーの間で揺れる感情の機微の表現が素晴らしく、はにかんだ顔だったり悲しげな笑顔だったり、表情ひとつひとつが繊細で、男性から女性に変わっていくさまをエディ・レッドメインが見事に演じています。
【わたしはロランス】(2012)
評価★4.0 おすすめ度84
監督:グザヴィエ・ドラン 脚本:グザヴィエ・ドラン
出演者:メルヴィル・プポー、スザンヌ・クレマン、ナタリー・バイ、モニア・ショクリ、スーザン・アームグレン、イヴ・ジャック、ソフィー・フォーシェ、マガリー・レピン・ブロンドー、Catherine Bégin、エマニュエル・シュワルツ、モニーク・スパジアニ、アントワン=オリヴィエ・ピロン
ストーリー
国語教師のロランスは、30歳の誕生日、恋人のフレッドに秘密を打ち明ける。「僕は女になりたい」という彼を、フレッドは2人で築いてきたものを否定されたように感じて非難した。だが彼女はロランスへの愛ゆえに、理解者として共に生きていく決意をする。
解説
二人の間には他には変えられないような愛情があって、でもそれだけじゃ乗り越えられない掛け違いが生じてしまうロランスとフレッドのそんな10年間のお話。グザヴィエ・ドラン監督はいつも多くない言葉と表情と音楽で映画を表現しています。
構図の技巧や色や小道具の使い方など、1コマ、1秒とも無駄な箇所のない、よく良く考えられて作られていると実感する映画。何もかもが完璧すぎて全てのシーンが絵画のようで、感情の比喩表現が美しくてとっても素敵で色彩や音楽の使い方に最初から最後までずっと心踊らされます。ビビットな色使いやハイセンスなBGMの使い方で幻想的なMVのようなシーンもあります。
性同一障害のただのラブストーリーではなく、時と共に変わっていく些細な心の変化や主人公の人生そのものが繊細に描かれています。160分と長尺の映画ですが最後まで飽きずに観ることができると思います。
【トランスアメリカ】(2005)
評価★3.8 おすすめ度82
監督:ダンカン・タッカー 脚本:ダンカン・タッカー
出演者:フェリシティ・ハフマン、ケヴィン・ゼガーズ、フィオヌラ・フラナガン、エリザベス・ペーニャ、グラハム・グリーン、バート・ヤング、キャリー・プレストン、レイノール・シェイン、リチャード・ポー
ストーリー
LAでひとり暮らす性同一性障害のブリーは、女性になるための最後の手術を控えていた。そんな彼のもとに、NYの拘置所から電話が入り、少年・トビーが自分の父親を探していると言う。ブリーは男として生活している時に一度だけ女性と関係を持っていた。
解説
LGBTQといった狭い話ではなく、男と女、親と子、先住民と移民、白人と黒人、都会と田舎、それぞれが相対しながらトランス(移動)の過程で、やがては認め合って超越し、融和していくお話。
作り上げられたコメディではなく、俯瞰から優しい眼差しで捉えた人間喜劇。各人が取る咄嗟のリアクションにジワジワ笑えたり、時に爆笑させられたりしながらも、その中に本音の愛情が感じられるのが素敵だと思います。
主人公を演じるフェリシティ・ハフマンの演技が凄く、本作では限りなく女に見せようとしている男性にしか見えません。最初、男性俳優が演じていると本気で思いました。明確な答えや解決はないけれど明るい未来を予感させる、そんな終わり方をします。
【ハンズ・オブ・ラブ 手のひらの勇気】(2015)
評価★3.8 おすすめ度83
監督:ピーター・ソレット 脚本:ロン・ナイスワーナー
出演者:エリオット・ペイジ(エレン・ペイジ)、ジュリアン・ムーア、スティーヴ・カレル、マイケル・シャノン、ジョシュ・チャールズ、ルーク・グライムス、メアリー・バードソング、デニス・ボウトシカリス、スキップ・サダス、トム・マッゴーワン、アンソニー・デサンド、スティンク・フィッシャー、ケヴィン・オルーク
ストーリー
女性警察官のローレルは、ある日ステイシーという若い女性と恋に落ち、一緒に暮らし始める。しかし幸せな生活もつかの間、ローレルは重い病に冒されてしまう。彼女は自分がいなくなった後のために、ステイシーに遺族年金を遺そうとするが…。
解説
まだ同性婚が認められなかった時代の2007年に起きた実話ベースのお話。LGBTQがメインでありつつ、裏テーマとして遺族年金に関する法律を変えるという大きなテーマも扱っています。
職業も好きなものも性格も、バックグラウンドが全く違う二人が出会って恋に落ちて、衝突したりしながらも愛し合っていく。ちぐはぐに見えた二人が時を経て、ぴったりの二人になっていくのが素敵です。
さすがの演技のジュリアン・ムーア。でも今回はエレン・ペイジの演技に持ってかれたかもしれません。細かい感情表情の仕方が上手くローレルを見る時の不安でたまらなくて心配で大好きって顔がとても切ないです。
エレン・ペイジも製作にかかわり、自身もまた同性愛者であることを公言するキッカケになった作品でもあり、多くの方に観てもらいたい素敵な作品です。
【燃ゆる女の肖像】(2019)
評価★4.1 おすすめ度86
監督:セリーヌ・シアマ 脚本:セリーヌ・シアマ
出演者:ノエミ・メルラン、アデル・エネル、ルアナ・バイラミ、ヴァレリア・ゴリノ、Cécile Morel
ストーリー
貴夫人から娘・エロイーズの見合いのための肖像画を依頼された画家・マリアンヌ。結婚を嫌がるエロイーズに近づきひそかに肖像画を完成させるが、絵の出来栄えを批判されてしまう。描き直すマリアンヌに、エロイーズは意外にもモデルになると申し出るが…。
解説
見ず知らずの他人から愛を確かめ合う存在になった2人の女性を、官能的に無音と視線で描いた作品。タイトル通り肖像画のように人物メインで撮られた構図。視線の交わし合いや表情の変化などの細かい演技が、より忠実に写し出されています。
幸福な時間を理想郷のように描きつつも、立ちはだかる現実を前にした制約的な状況における二人のリアルな感情の波に後半は特に圧倒されます。二人の恋愛模様だけでなく、女性の生きづらさを訴えた作品でもあり、それはお手伝いのソフィという女性においても、女性ならではの生きづらさを示しています。
演出も映像も伝えたいメッセージも良く、当時の背景を考えながら観ると色々思うこともあります。キャストの演技や映像美に圧倒される完成度の非常に高い作品だと思います。
まとめ(評価とおすすめ度)
タイトル | 評価★ | おすすめ度 |
【リリーのすべて】 | ★4.0 | 87 |
【わたしはロランス】 | ★4.0 | 84 |
【トランスアメリカ】 | ★3.8 | 82 |
【ハンズ・オブ・ラブ 手のひらの勇気】 | ★3.8 | 83 |
【燃ゆる女の肖像】 | ★4.1 | 86 |
【リリーのすべて】【わたしはロランス】はちょっと自分勝手だなって思ってしまいますね~
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