今回ご紹介する作品は【RAW~少女のめざめ~】【TITANE/チタン】【女神の継承】【BLISS ブリス】【ぼくのエリ 200歳の少女】の5作品をネタバレしない程度に紹介します。
もう怖いだけじゃなくて変な映画です笑笑。内容やメッセージが分かる作品もありますが、監督が変態なのか人によってはチンプンカンプンな作品も混ざっておりますので、覚悟してお楽しみください。
【RAW~少女のめざめ~】(2016)
評価★3.6 おすすめ度85
監督:ジュリア・デュクルノー 脚本:ジュリア・デュクルノー
出演者:ギャランス・マリリアー、エラ・ルンプフ、ローラン・リュカ、ブーリ・ランネール
ストーリー
16歳のべジタリアン・ジュスティーヌは、初めて親元を離れ、獣医科大学の寮で暮らすことに。ある日、先輩のしごきの一環として全身に血を浴びせ掛けられ、ウサギの生の腎臓を強制的に食べさせられた彼女は、体にさまざまな異変を感じるようになる。
解説
菜食主義で育った少女が獣医学校へ入学し、歓迎儀礼で強制的に生肉を食べさせられた事から、次第にその魅惑的な味覚の虜へ変貌していく物語。
ユニークな感性で少女の成長を描くフランス人監督で、次作【TITANE/チタン】で1993年のジェーン・カンピオン以来となる二人目の女性パルム・ドール受賞監督となるジュリア・デュクルノーが手掛けた作品で、現代社会ではタブーとされるカニバリズムで少女の暴力と性への渇望を描く物語が識者達から賞賛されて多くの国際映画祭で上映されました。批評家からはアート映画として評価の高い作品ですが、テイストとしてはメタルバンドのミュージックビデオの様な俗っぽさがあり、それが青臭さを滲み出して青春期で様々なことを体験する少女の抑えきれない衝動を演出しています。
ただのカニバリズムというより、親子愛とか通過儀礼というのが色々なとこに比喩として表れていて分かりやすく、愛すにせよ憎むにせよどこかでかけてしまうブレーキを振り切る、人の中に眠る狂気を感じさせる作品です。
【TITANE/チタン】(2021)
評価★3.7 おすすめ度81
監督:ジュリア・デュクルノー 脚本:ジュリア・デュクルノー
出演者:ヴァンサン・ランドン、アガト・ルセル、ギャランス・マリリアー、ナタリー・ボイヤー、ドミニク・フロ、ミリエム・アケディウ、Théo Hellermann
ストーリー
幼い頃、交通事故により頭蓋骨にチタンプレートが埋め込まれたアレクシア。それ以来、彼女は“車”に対し異常な執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになる。自らの犯した罪により行き場を失った彼女はある日、消防士のヴァンサンと出会い…。
解説
2021年のカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞。監督は【RAW~少女のめざめ~】というカニバリズムを取り上げた怪作で鮮烈なデビューを果たしたジュリア・デュクルノー。事故で頭部に金属プレートを入れた女性の偏った愛と取り巻く人達の偏った愛が交差する話。
倫理に真っ向から反したグロテスクな演出が多く、楽しんで見ることのできる人は限られるかもしれません。本作がパルムドールを受賞した事は意外のように思えますが、過去にタクシードライバーやパルプフィクションも受賞しているなど、作品の革新性や技術を高く買うような選考がみられるため、ある程度納得はいくと思います。監督はクローネンバーグからの影響を受け、批評家の中には本作を塚本晋也や三池崇史の映画と関連づける者もいます。映画が発明されて130年に至ろうとしていますが、未だに誰も知らない可能性を秘めている事に驚愕させられる一作だと思います。
不快なシーンは多いですが、ちゃんとユーモアもあって何よりかっこよく、出口が読めないことに違和感がなくてむしろ楽しめ、結論としては割とありきたりな愛とかジェンダーをテーマとしてるのに尖りまくってて観たことない感じの作品となっております。
【女神の継承】(2022)
評価★3.9 おすすめ度90
監督:バンジョン・ピサンタナクーン 脚本:バンジョン・ピサンタナクーン
出演者:サワニー・ウトーンマ、ナリルヤ・グルモンコルペチ、シラニ・ヤンキッティカン、Yasaka Chaisorn、ブンソン・ナークプー
ストーリー
小さな村で暮らすミンが原因不明の体調不良に見舞われまるで人格が変わったように凶暴な言動を繰り返す。途方に暮れた母親は祈祷師である妹のニムに助けを求める。もしやミンは一族の新たな後継者に選ばれ憑依されその影響でもがき苦しんでいるのではないか。
解説
タイ東北部の村で受け継がれてきた祈祷師一族を描いたR18+のモキュメンタリーホラー映画。
ダークな世界観を得意としてホラーに初挑戦した【哭声/コクソン】が世界的に評価された韓国人監督のナ・ホンジンが、かねてより注目していたタイの監督バンジョン・ピサンタナクーンに企画を持ちかけて実現したモキュメンタリー方式のホラー映画で、タイのローカル映画ながらもナ・ホンジンの名もあって世界各国で公開されて話題になりました。【哭声/コクソン】のスピンオフとあって作風は似通っていて、ホラーの枠組みで人類を悩ます”信仰”と”不平等起源論”を問います。その深淵な主題を語り尽くすには130分の長尺でもキャパ不足は否めない所ですが、【哭声/コクソン】や日本の【ノロイ】らと同じくアジアらしい土着信仰を西洋の悪魔に代わってホラーのドライブ感に繋げている一作です。
目を背けたくなるような生理的な恐怖表現が散りばめられており人を選ぶ映画ですが、常に異様な空気感と読めない展開のせいで良い意味での気持ち悪さがずっと続き、恐怖の対象が徐々に大きく、露わになっていく様は、俳優さんの演技力も相まって、唯一無二の怖さが味わえる作品だと思います。
【BLISS ブリス】(2019)
評価★3.5 おすすめ度82
監督:ジョー・ベゴス 脚本:ジョー・ベゴス
出演者:ドーラ・マディソン、トゥルー・コリンズ、リース・ウェイクフィールド、ジェレミー・ガードナー、グラハム・スキッパー
ストーリー
画家のデジーはスランプに陥り、数カ月間作品を仕上げられずにいた。しびれを切らしたクライアントから援助を打ち切られ、家賃も払えなくなる。現実から逃避するように酒とドラッグに溺れるデジーは、「ブリス」というドラッグを吸引すると意識を失う。
解説
スランプのアーティストが謎のヤバいドラッグに手を出して禁断症状を起こしながら傑作を産み出す衝撃の過程を描く。
一見、創作においてドラッグに堕ちて狂っていく様を捉えたようにも見えますが、終盤に近づくにつれ、古典的なホラーのジャンルである事が分かってきます。これは監督自身の映画制作において行き詰まるストレスなど、実際の出来事が主人公に反映されてるらしいです。そしてデジーを演じた女優さんも演りたい役を演じられないとか同じようなストレスがあったらしく、その思いがこの狂気の演技に表れのかもしれません。本当にすごい熱演で作ってる側も頭おかしいんじゃないかなぁ?と思えるくらいの映像体験が出来ます。
ストーリーはあって無いようなものですが、血祭りとはまさにこの事と言った感じの終盤30分の血と肉の飛び散りようは、近年なかなか見ないほどの大盤振る舞いで、ドラッギーな映像と曲とやり過ぎなくらいのゴア描写、好きな人は絶対好きって作品だと思います。。
【ぼくのエリ 200歳の少女】(2008)
評価★3.7 おすすめ度85
監督:トーマス・アルフレッドソン 脚本:ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト
出演者:カーレ・ヘーデブラント、リーナ・レアンデション、ペール・ラグナー、ヘンリック・ダール、カーリン・バーグクィスト、ペーテル・カールベリ、イカ・ノード、ミカエル・ラーム、カール・ロバート・リンドグレーン、Anders T. Peedu
ストーリー
いじめられてばかりの12歳の少年・オスカーは、隣の家に越して来た少女・エリに出会う。彼女は夜にだけ外出し、キャンディも食べられない不思議な少女だった。同じ頃、街では不可解な失踪や殺人が起こり始め、オスカーはエリがバンパイアだと気付く。
解説
12歳の少年オスカーと、見た目は12歳だが中身は200歳の少女エリが描く、切なさの中にグロさを兼ね備えた美しいホラー映画。
雪国のスウェーデンが舞台なだけあって、全体的に静謐で厳かな雰囲気があり、その雰囲気が更に吸血鬼であるエリの幻想感を増しています。そんな幻想的な雰囲気も美しいですが、お互いに異なる存在の二人が徐々に心を通わせていく一連の場面も負けないくらいファンタジックで綺麗だと思います。日常の中にホラー好きが喜べる気持ちの良い部分を用意してくれているおかげで、身を預けて楽しむだけでよく、テーマとなる復讐の要素もお洒落と言えるほどのカジュアルさなために、心地の良い復讐映画となっています。作品に罪はないですが、残念なのは邦題とモザイクのおかげで誤解してしまうこと。気になる方は調べてみてください。この作品に対する感想が変わってくると思います。
始終、物悲しい音楽と北欧の薄暗い空が美しく、ホラーとも恋愛モノともジャンル分けのしづらい、ファンタジーというよりかは現実的な映画で、少年とヴァンパイアの交流を通して孤独や悲しみ、ちょっと狂ってる愛情を静かに感じられる作品です。
まとめ(評価とおすすめ度)
タイトル | 評価★ | おすすめ度 |
【RAW~少女のめざめ~】 | ★3.6 | 85 |
【TITANE/チタン】 | ★3.7 | 81 |
【女神の継承】 | ★3.9 | 90 |
【BLISS ブリス】 | ★3.5 | 82 |
【ぼくのエリ 200歳の少女】 | ★3.7 | 85 |
【女神の継承】は楽しめるので特におすすめです。【TITANE/チタン】や【BLISS ブリス】は他の作品よりもちょっと理解しずらいかもしれません。
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